コラム

資産だけは、家計の集計から完全に切り離した

公開日 2026/7/29
資産設計の話

ふたかけには、銀行口座や NISA の残高を手で記録する機能がある。月に一度、口座の残高を打ち込んでおくと、推移がグラフになる。

この機能を作るときに最初に決めたのは、資産の数字を、家計の集計に一切乗せないことだった。支出の合計にも、耐性メーターにも、月次レポートにも出さない。完全に分離してある。

一見すると不便な作りなので、なぜそうしたかを書く。

ストックとフローを足すと、意味のない数字になる

会計の用語で言えば、残高はストック、収支はフローだ。

  • フロー:期間のあいだに動いた量。今月の支出15万円、今月の収入30万円
  • ストック:ある時点で存在する量。今日の貯金残高300万円

この2つは単位が違う。「今月の支出15万円」と「貯金残高300万円」を足しても、出てくる数字は何も意味しない。

ところが家計簿アプリでは、これが混ざりやすい。たとえば貯金口座に10万円を移したとき、それを「支出」として記録してしまうと、その月の支出が10万円ぶん膨らむ。実際には何も消費していないのに、使いすぎたように見える。

耐性メーターは「支出 ÷ 手取り」で計算しているので、この10万円が混ざると数字が丸ごと嘘になる。貯金するほどメーターが悪化する家計簿になってしまう。

だから、置き場所ごと分けた

対策としてよくあるのは「振替」という区分を作って集計から除外する方法だ。それでも動く。

ふたかけはもう一段強く分けて、資産を記録する場所そのものを、収支とは別のところに置いた。資産の口座は、支払い手段(現金・カード等)とも別のデータとして持っている。読み書きするのは資産の画面だけで、他のどの画面からも参照されない。

「集計するときに除外する」のではなく、「集計に混ざりうる場所に最初から置かない」という考え方だ。

前者は除外を書き忘れた箇所で事故る。後者は、書き忘れても混ざりようがない。規律で守るものは必ずいつか破られるので、構造で守れるなら構造で守るほうがいい。

手入力にした理由

資産の残高は、自動では取れない。銀行連携をしていないからだ。だから月に一度、自分で口座を見て打ち込むことになる。

面倒ではあるが、この機能に関しては手入力でもそれほど困らないと思っている。理由は2つある。

頻度が低くていい。 支出は毎日発生するので入力の手間が積み上がるが、残高は月に一度で足りる。推移を見るのが目的なので、日次の精度は要らない。

打ち込むときに残高を見る。 口座を開いて数字を確認する行為そのものが、資産を把握する行為になっている。自動で取り込まれた数字は、たいてい見られない。

もっとも、これは「手入力しかできないことの正当化」でもある。連携できるなら連携したほうが便利なのは間違いない。ただ、資産に関しては失われる価値が支出ほど大きくない、という程度の話だ。

種別は4つ、集計では2つに束ねる

細かい話だが、資産の口座には種別を持たせている。預金・投資・現金・その他の4つだ。

ただし集計するときは「預金・現金」と「投資」の2つに束ねる。理由は、この2つで性質がはっきり違うからだ。

預金と現金は、額面が減らない。投資は増えることも減ることもある。推移のグラフを見るときに一番知りたいのは「投資の変動がどれくらい効いているか」なので、そこだけ分ければ足りる。

4種類のまま4色でグラフにすると、細かすぎて傾向が読めなくなる。分類は細かく持ち、表示は粗く束ねるのがちょうどいいことが多い。持つときに粗くしてしまうと後から分けられないが、粗く見せるのは後からいくらでも変えられるからだ。

名義も持たせてある

もうひとつ、口座には名義(どちらの持ち物か、あるいは共有か)を持たせている。

ふたりで使う家計簿だと、ここは避けて通れない。生活費は共有でも、貯金は別々ということは普通にある。「世帯の資産合計」しか出ないと、自分の口座がいくらか分からないので、そもそも入力する気にならない

一方で、名義を持たせても権限は分けていない。相手の口座も見えるし編集できる。世帯は2人までで、そもそも家計を共有する相手なので、そこに壁を作ると使い勝手だけが悪くなると判断した。

名義は「誰のものか」を表示するためのラベルであって、アクセス制御ではない。この2つを混同すると、家計簿がいきなり社内システムのような手触りになる。

混ぜないことで何ができるようになったか

分離した結果、耐性メーターは「暮らしにいくらかかっているか」だけを見る指標として保たれている。貯金しても投資が値上がりしても、メーターは動かない。

これは当たり前のようでいて、家計簿としては大事な性質だと思っている。「今の暮らしが収入に収まっているか」と「資産がいくらあるか」は、別々に知りたいからだ。片方が良くて片方が悪いという状態は普通にあるし、混ぜてしまうとその区別がつかなくなる。

分けたから、両方見られる。

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